たった一言が言えなくて


「……だって、さ。あの馬鹿……ありえないんだもん」




ここで私の過去をあっさり暴露しなければならないのかと思うと溜め息が出てくる。

そもそもアイツがあんなんだからいけないんでないか!!



私はちらっとその奴が居るだろう場所に視線を向けた。

そいつは男友達とばか騒ぎ(と言ういちゃこらをしてやがる)全く、けしからん。




「まぁまぁ、相変わらず無邪気にいちゃついてるわねぇ、佳君」

「いやいや、男同士だからね、あれ」




佳君こと、幾田佳斗は私とは10年らいの……腐れ縁、いや、俗世で言う幼なじみと言う関係だったりする。






そして、もうひとつ──。






「佳君に片想いして10年以上だっけ?穂南さんも良く飽きませんねぇ」




華乃の言葉にバッと反応して口を両手で覆ってやる。


声がでけぇよ!声がぁ!!





またちらっと佳斗を見るが周りが煩いのもあって佳斗には届いていないようだ。



いや良かった、良かった。


と安心しつつも何か、悲しい。




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