たった一言が言えなくて

私はサッサッとプリント類の束を教卓の上に置く。



これで、終わりだ。後は日誌を担任に提出するだけ。






「穂南ぃー」


「あん?」




自分の名が聞こえた。
呼ばれたのだと気づけば『誰だよ、忙しいのに』と思いながら自分の席から日誌を取り出しつつ、私は顔を上げた。





「うぉぉおう!」


「何、野生の雄叫びあげてんだよ」




呆れた表情でドアに寄っ掛かる奴に思わず変な声を上げてしまった。
何てこった、せめて「きゃっ!」とか可愛いらしく言えたら良かった……じゃなくて!





「アンタこそ何故まだここにいるのかね?」




そうそこに居たのは我が幼なじみにしてお、おも想いを寄せている幾田佳斗。





「そりゃあ……お前と帰るためですけど」





何故か少し照れ臭そうに言う佳斗を私はキョトンとした表情で見つめる。


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