天使への判決
「一本くれへんか?」
シュウイチさんが人差し指と中指を俺の方へ突き出す。
俺は慌てて自分の胸ポケットからショートホープを取り出すと、それを一本抜いてシュウイチさんに渡した。
同時にジッポの蓋を素早く開け、火をスッと差し出す。
「悪いな…」
シュウイチさんは大きく息を吸って煙を肺に取り込むと、勢い良く俺の顔に煙を吹きかけた。
目の前が煙に包まれる。
目を細くしながら辛うじて見るシュウイチさんは、耳たぶを頻りに触りながら俺の方に鋭い眼光を向けていた。
「会議の席だから…皆の前では言えんかったけどな…」
この目に思わず俺の心は折れそうになる。
シュウイチさんの目は瞬きひとつせず、俺の目を見据えていた。
ケンカが強いとか神経が太いとかそう言う問題ではない。
シュウイチさんの眼光はまるで、獲物を狙うライオンである。
この世界で長年生きてきた男だけが成し得る脅しの視線だ。
「…お前、何か隠してへんか?」
ドクン…
シュウイチさんの言葉に俺の心臓は大きく波を打った。