天使への判決
3.尽くす女
当然のことながら、俺は朝戸の通夜にも葬儀にも出席することは許されなかった。
長く連れ添い兄弟でもあり友人でもあった朝戸の最後をみとることは出来なかった。
結局、俺が最後に見た朝戸の姿は病室での土下座…
その姿を思い出す度に俺の胸は張り裂けそうなほど締め付けられる。
「朝戸…」
チラッと見据えた部屋の片隅に残るのは、中山組から詫び料として提供された『株式会社ピュアリス』と『株式会社久山精機』と書かれた2冊のファイル。
そのファイルが俺と朝戸との最後の関係にさらなる苦い思いを残す。
何度もファイルをシュウイチさんに返そうとしたのだが、
「一度はお前に預けた情報や…俺は受け取らん。」
そう言ってシュウイチさんは頑なにそれを押し返した。
「最後までやり通すのも、朝戸に対する報いなんやないか?」
このファイルを見る度、辛い思いが募るのだが、シュウイチさんはそれを乗り越えろと言う。
耐えること…
乗り越えること…
それがナオキを逃がしたことの俺への責任だと…