天使への判決

住宅街を抜けて表通りに出るとお洒落なカフェが建ち並ぶ並木道が続く。

その一角に『CASA PIATTO』と書かれた木目調の看板が見えて来た。

俺もこの店には何度か来たことがある。


『フランス料理に連れて行くように…』

退院の前、リサから貰った手紙の内容を思い出し思わず口元が綻ぶ。

リサが選んだレストランはそんなに高級でもなく、夫婦がこじんまりと営む小さなイタリア料理の専門店だった。


入口には丁寧に手入れされた、可愛らしい草木が軒を連ね客を出迎える。

朽木で出来た、可愛らしい手作り風の入口ドアを開けると、カウンターでオーナー夫婦と楽しく会話を弾ませるリサの姿が見えた。

並木道を抜けて店に吹き込んだ風が、リサの栗色の髪の毛を揺らした。


「いらっしゃいませ」
「ケンジ」

オーナー夫婦の声とほぼ同時に、リサが俺の名前を呼び手を振った。


リサはジーンズにキャミソールといったシンプルな格好だった。

そのシンプルなファッションがモデルのようなリサのスタイルを際立てる。

クラブで初めて出逢ったときのドレス姿。
入院中、病院で見ていたスーツ姿。

今まで見てきたリサのイメージとは違うカジュアルな雰囲気に、俺の胸は激しく鼓動を打つ。



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