天使への判決
「ねえケンジ、退院してからどうしてたの?」
そう言って、頬杖を着きながら、俺の目を見るリサ。
「ああ…まあ、いろいろと…な…忙しかったよ…」
俺は答えにならない、曖昧な返事をすると、リサから目を反らしメニューをメニュー立てに戻した。
「傷はもう大丈夫?
痛んだりしない?」
「ああ、まだたまに痺れるような感覚はあるけど、日常生活に差し支えはねえよ。
リサが看病してくれたお陰だな」
俺は照れを隠すため胸元からタバコを取り出すと、それを口に咥えた。
「看病なんてしていないわよ。
昼休みに花屋に立ち寄って、ヤクザ屋さんのムダ話を聞きに行ってただけ」
俺の頭の中に、病室の窓際に飾られた向日葵が浮かび上がる。
『周りを温かく包み込む』
リサが俺に対してそんな印象を抱いてくれた事を思い出し、思わず口元が緩んだ。
「なあに?
今、笑ったでしょ!」
「笑ってねえよ」
俺は笑いながらジッポに火を点け、それをタバコの先に当てがう。