天使への判決
少し頬を赤くし、膨れっ面をしたリサの顔がまた俺の鼓動を高める。
俺はリサの方に煙が行かないように注意しながら、顔を上に向けて煙をゆっくりと吐き出した。
「俺さ、あのチンピラに刺されて意識が無くなって行く時、もうこのまま死んでもいいかなって、思ったんだ…。
今までケンカばっかりして、ろくな人生送ってなかったからな。
いろんな人たちに迷惑ばっかかけて来たから罰が当たったんだと…
でもな、病室のベッドの上で、やっぱり死ななくて良かったって感じる事ができた。
…だって、地上にも天使がいる事を知ったからな」
「天使…?」
リサは不思議そうな目をしながら首を傾げた。
言ってしまった後で、急に恥ずかしさが込み上げる。
「はい、お待たせ!」
言葉がなかなか出て来ない、俺の緊張感を見計らったかのように、カウンター越しからマスターが、リサの前に出来上がったパスタを差し出した。
クリームチーズの甘い香が二人の間に立ち込める。
「美味しそう!」
リサが嬉しそうに目を輝かせた。
病室で見せていた艶っぽい雰囲気とは、打って変わって、今日は子供のような無邪気な素顔を覗かせる。