天使への判決
少し遅れて、俺の前には、アサリのスープパスタとパン、それからサラダのセットが運ばれた。
古めかしく、こじんまりした店内は、決してお洒落にデートを楽しむといった感じではない。
どちらかといえば学生やOLが、友達と機能的にお腹を満たす店づくり。
俺は運ばれてきたパスタを頬張りながらリサに聞いた。
「なんでこの店にしたんだ?」
リサは一瞬、躊躇うような表情をしたものの、すぐに料理の方に視線を戻し、パスタを慣れた手捌きでフォークに巻き付きながら話し出す。
「ミキ姉ちゃんからいろいろ話し聞いたと思うけど…
私ね、小さい頃両親を事故で亡くしたの。
二人が亡くなる前に、一度だけ外食した記憶があるのがこのお店。」
リサは長く艶やかな髪の毛を、耳に掛けるようにしてパスタを口に運んだ。
髪の毛の隙間から覗かせた白いうなじが、色気を誘う。
「中学生の頃かな…
たまたま叔母さんに連れて来られて。
それ以来、何かが始まる時には、決まってここで食事をするようにしてるの」
そう言って、リサは奥で忙しそうにしているオーナー夫婦に目をやった。
振り返ったマスターが優しそうな笑顔で微笑む。