天使への判決

「畏まってなくて、いいお店でしょ?」

俺は曖昧に相槌を打った。

「ここに来ると、なんだか懐かしい感じがするし、緊張しなくて済むの。



店に入ってからずっと、俺の心はリサに奪われたままだ。

俺はこんなにも格好悪い自分の心情を、リサに気付かれないように注意しながら、皿の上の料理をがむしゃらに平らげた。

そんな俺の様子を見ながらリサは、くすっと笑った。


「なんだよ…」

「いや、美味しそうに食べるなあと思って」

「そうか?」

「うん。
私ね、男の人が美味しそうにご飯を食べる姿が好きなの」

リサは遠くを眺めるようにして言った。

「微かに残っている父の記憶は、母が作った料理を美味しそうに食べてる姿。
私のおかずまで食べちゃって、母に怒られてた父が好きだった」

「両親が死んだ後、親戚に引き取られてから、ご飯はずっと一人、部屋で食べてたの…」


< 135 / 328 >

この作品をシェア

pagetop