天使への判決
家族で囲む食卓に憧れを抱いているという。
そんなリサの辛い過去を聞いているのにも関わらず、俺は嬉しくて仕方ない。
思わず笑みが零れそうになる。
リサは俺と病室で毎日のように顔を合わせ、話していたのに、自分の過去をほとんど口にすることはなかった。
田子森婦長から聞いていなければ、おそらく両親がいないということもリサの口からは出る事はなかっただろう。
「俺も似たようなもんだよ。
いや、俺の場合、親に愛された記憶はねえな…
俺の母親は俺がまだ小さい頃、俺を連れて若い男と駆け落ちしてさ…
て、いうか正確には俺が無理矢理ついて行ったんだけどな」
気が付くと、俺も自分の過去を話し始めていた。
「そりゃ悲惨な毎日だったよ。
相手の男ってのがかなり悪いヤツでね、自分は働かないくせに、お袋に水商売をさせてやがるし、俺は毎日のように殴られる。
その憂さを晴らすように、俺はケンカにのめり込んでいったんだ。
そして気がついた時には、この世界にどっぷりさ…」