天使への判決
会計を済ませ、店を出た俺たちは並木道を二人で歩く。
俺の腰を気遣うように、ゆっくりと歩いていたリサ。
その手が俺の腕に回されている。
リサには今、彼氏と呼べる存在はいないと病室で聞いていた。
そして、俺に対して好意を抱いてくれている事もなんとなく察知できる。
俺が愛の言葉を口にすれば、きっと二人は今日から恋人同士だ。
しかし、中山組と警察が取り巻く今の俺の立場は、いつ危険な状況に置かれてもおかしくない。
そして全く関係のないリサを、危険な目に巻き込んでしまってはまずいという気持ちが、その想いにブレーキを掛けていた。
一人で乗り込んだシーソーゲームのように、俺の心は行き場のない上下運動を繰り返す。
風で髪の毛が揺らぐリサの横顔をちらっと見た。
「なあ、リサ…」
「ん?」
「俺は完全にイカれてしまったよ」
「何?」
リサが不思議そうな顔で俺の目を覗き込む。
その仕草に心臓が破裂しそうだ。
「お前が目の前に現れてから、俺が俺じゃないんだ」