天使への判決

俺たちは手を繋いで再び歩き出した。

並木道を吹き抜ける風は、夏の蒸し暑さを忘れさせてくれる。

どこに向かう訳でもない。
単純作業のようにただ足を前に進める。

その何でもないような時間が心地よく、俺の緊張はいつしかほぐれていた。

リサとの会話はヤクザの世界で意地を張り続けてきた俺の心に、この並木道のような心地よい風を吹き入れていく。

つい先日までのナオキや朝戸のゴタゴタが別世界の事のようにさえ感じる。


俺は「愛してる」とか「好きだ」とかいう甘ったるい言葉を今まで散々吐いてきた。

リサにそんな言葉が言えずにいるのは、恋人関係にどっぷり浸かりリサを危険な目に巻き込んでしまう事を避けるためなのか…

いや、多分今までの女とは違う、特別な目でリサの事を追っているから…

言葉を安売りしないよう、自然と注意を図っているんだ。


俺たちはどちらが誘導する訳でもなく、裏通りのホテルの中へと足を運んだ。
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