天使への判決
「ダメよ!調子に乗らせたら」
会社から目と鼻の距離にあるバーで、私はユウコから恋愛の相談を受けていた。
カウンターだけの隠れ家的なお洒落なバーで、落ち着いて飲むには持ってこいの場所。
会社の近くという事もあって、私たちはここをよく利用している。
無口なマスターは殆ど私たちの会話に口を挟む事はなく、変な気を使う必要もないので、ここで飲むと気兼ねなく上司の悪口や恋愛話に華を咲かせる事ができるのだ。
「でも毎日でも逢いたいよ」
ユウコはブルーに輝くカクテルを口に含むと、大きくため息を吐いて頬杖をついた。
そんなユウコの横顔を眺める。
潰れた鼻、腫れぼったい目元、色黒の肌…
愛嬌はたっぷりだが、お世辞でも美人とは言いがたい顔で、恋愛を語るその様子は滑稽だ。
「ユウコはもっと自分に自信を持たなきゃ。
尽くせば尽くすほど男は自惚れてしまうの。もう少し距離を置いた方が絶対にいいって」
「そうかなあ…」
「そう。男はそういうもんなの!
マスター、カルアミルクおかわりね!」
私は空いたカクテルグラスをテーブルの上に音を立てて置いた。
「リサはいいよ…目が大きくて美人でスタイルも良くて。
私なんかスタイルも良くないし目も小さいし」
よく解ってんじゃん…
「そんな事ないって。ユウコは十分に魅力的なんだから。
私が言うんだから間違いない!」