天使への判決
「いらっしゃいませ」
マスターの声に反応して私とユウコは後ろを振り返った。
「おっ。二人でコイバナか?」
そこには私達の顔を覗き込む永瀬専務の甘いマスクがあった。
シトラスの爽やかな薫りが漂う。
「あ…お、お疲れさまです」
突然の来店者に私たちは驚きを隠しきれない。
「込み入った話していたのか?」
専務はユウコの顔と私の顔を交互に見た後、
「おジャマだったら店変えるけど…」
そう言ってユウコの目を見据えた。
「専務、お一人だったら一緒に飲みましょうよ」
ユウコの話に嫌気がさしてきていた私にとって、専務の突然の訪問は退屈凌ぎには持ってこいの出来事。
「そうか?サンキュ。
会社で有名な美女二人と飲める機会なんて滅多にないからな」
私が隣の椅子を引くと、専務は長めの髪の毛を掻き上げ、照れたように微笑みながら私の横に腰を下ろした。