天使への判決

「いえ…意外だなあと思って…」

「ん?何が?」

「だって、専務っていつも笑っているか怒っているか、どちらかの印象が強いですから…
こんな風に塞ぎ込んでるのは見た事ないですし」

「え?塞ぎ込んでる?俺が?」

専務は眉を潜め、少し戸惑ったような表情を覗かせた。

どうやら、私たちに対して虚勢を張っていたいようだ。


「そうですよ。さっきから溜息ばっかり!」

それまで黙っていたユウコが身を乗り出し、私を挟む形で会話に入って来た。

膨れっ面をして可愛らしさをPRするが、ただでさえ丸い顔がパンパンに張って、思わず吹き出しそうになる。


「う〜ん…参ったなあ…」

専務はそう言うと、長い髪の毛を掻き上げて、照れ臭そうに笑った。

なに、それ…

その仕草があまりにもわざとらしくて、思わずイラッとなる。

折角、いろんな面白話が聞けると思っていたのに…

どうやら的が外れたらしい。


そんな私の感情とは引き換えに、隣から専務を覗き込むユウコの目は、すっかり恋する乙女に変わってしまっている。


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