天使への判決
「店の車で、私の家まで届けてもらうわけにはいきませんか?」
愚問だと解ってはいるものの、私にはどうしようもない。
「店の車に乗るはずねえだろ!」
大きくなる店長の声。
「じゃあ、花屋さんに引き取ってもらうとか…」
ん?
「っていうか、店長!なんで配達に来た時に断らなかったんですか!?」
そうだ。これは列記とした営業妨害。
こんな事いつもの店長ならすんなり断っているはずだ。
「ほら…ちょっと前に店であった傷害事件の…
例のあのヤクザからなんだよ…」
あ…
「花屋だからって追い返したりしたら後が怖いからな」
やっぱりケンジからか…
フロアーに敷き詰められた向日葵の写真を見て、本当は一目でピンと来ていた。
かっこ良くキザに決めたかったのかな…
でもキザっていうより、これじゃ感動も何もあったもんじゃないじゃん…
ケンジは意外と素直で不器用な人間なのかもしれない。
「店長、やっぱり引き取りにだけ行きます。
配送の手配だけしてもらってていいですか?」
嬉しいような、ありがた迷惑なような、何とも言えない不思議な感覚だった。