天使への判決
「高山さんの家って、実は金持ちなのよ
父親が金属加工の会社やってるって聞いた事あるわ」
「ふうん…」
私はテーブルの上に綺麗に並べた書類に目を通しながら、曖昧な返事をする。
「金属加工ねえ…」
広告の出稿とは縁のない業種なだけに、おそらく誰も気に留めてないのだろう。
そんな話は初めて聞く。
「高山さんって、もう40近いよね
この歳になって結婚しないのって、やっぱり家が金持ちとか、そんなのがあるのかな」
プロジェクターにスクリーン、ノートパソコン。
ユウコは手際良く会議の準備を進めながら、こっちを振り返る事もなく淡々と話を続ける。
「相手がいないだけじゃない?」
「たしかにそうかもね…
仕事一筋って感じだし」
振り返ったユウコと顔を見合わせ、笑い合った。