天使への判決


「高山さんの家って、実は金持ちなのよ

父親が金属加工の会社やってるって聞いた事あるわ」


「ふうん…」

私はテーブルの上に綺麗に並べた書類に目を通しながら、曖昧な返事をする。


「金属加工ねえ…」


広告の出稿とは縁のない業種なだけに、おそらく誰も気に留めてないのだろう。

そんな話は初めて聞く。


「高山さんって、もう40近いよね
この歳になって結婚しないのって、やっぱり家が金持ちとか、そんなのがあるのかな」


プロジェクターにスクリーン、ノートパソコン。

ユウコは手際良く会議の準備を進めながら、こっちを振り返る事もなく淡々と話を続ける。

「相手がいないだけじゃない?」


「たしかにそうかもね…
仕事一筋って感じだし」

振り返ったユウコと顔を見合わせ、笑い合った。



< 181 / 328 >

この作品をシェア

pagetop