天使への判決
専務の言葉の裏にある内容を私は必死に汲み取ろうとしていた。
「とりあえず今回のプレゼンだけの広告モデルだよ
いや、モデルって言ってもあくまで仮のサンプルだがな
コンペにうちの会社が勝って、実際のモデルを起用するまでの仮素材に使わせてもらいたい」
そして怪訝な顔をする私の顔色を伺うように
「とりあえずコンペが終了するまでやってみてくれないか?
今後の話はその後、またゆっくり考えればいいからさ」
そう言って専務はニコッと笑った。
撮影に同行し、モデルとして被写体となり、広告にサンプルで使用するだけ。
しかも給料とは別にモデルとしての費用を支払うという。
私にとって、決して悪い話ではなかった。
昨日までの私だったら二つ返事でOKしていたに違いない。
「2〜3日考えさせてください」
私は、それだけ言って専務室を出た。