天使への判決
「松山!何ボーッとしてんだ!」
専務の怒鳴り声に驚いて、アシスタントのバイトの男の子がレフ板を落とした。
手を腰にあてた専務が、しかめっ面をしている。
「あ…、すみません…」
頭を下げる私の横で、コーディネーターの椎名さんが、困った顔で次の衣装を手にしたまま、立ち尽くしていた。
「あの、リサさん…
今度はこのワンピなんですが…」
裾にハートの刺繍があしらわれた白のワンピース。
「チークも濃いめにして、妖精のようなイメージを出したいんです」
撮影にモデルとして参加する事で、専務が表現したい商品コンセプトが、ひしひしと伝わってくる。
「ありがとう」
私は椎名さんに微笑みかけ、ワンピースを手に、ロケバスへ向かった。