天使への判決
しばらく沈黙が続いた後、専務が口を開いた。
「なあ、松山……」
…!
その低く、深刻な声に、思わず心臓が跳ね上がりそうになる。
「はい…」
私は冷静を保ちながら、振り返った。
「俺はもう三十代半ばの中年だ
この歳にして、恥ずかしいのだが…
随分歳下の女性に恋してしまったようなんだ」
専務は少し照れたように俯き、言葉を選ぶようにゆっくりと話す。
「えっと…なんて言ったらいいのかな…
今まで自分からこんな事…言った事ないんだ」
私だって、そんなに鈍感ではない。
この時点で専務が私に何を言おうとしているのかくらい、容易に想像がつく。