天使への判決
翌日、残りのカットを撮影した。
ワンピースを着た私が、ミュールを手に、砂浜をゆっくりと歩きだすと、
専務はカメラを手に後退りながら、私の表情に指示を飛ばす。
撮影中、専務は私の身体を気遣かって何度となく休憩を入れてくれた。
椎名さんがその度、冷たいお茶を持ってくる。
私もその気持ちに何とか応えようと最高の表情を作った。
撮影は順調。
最後のポーズを残した所で、私はずっと気になっていた事を聞いてみた。
「専務、高山さんはこのプロジェクトから外したのですか?」
「いや…違うよ
彼女は才能もあるし、力をだすとかなりの戦力になる
今回のコンペにはいなくてはならない存在だ」
「じゃあ、今回の撮影にどうして同行しなかったのですか?」
専務は少し考えるような仕草をした後、
「誰にも言うんじゃないぞ」
そう言って、真面目な顔つきで眉間にしわを寄せた。
「彼女には長期休暇を与えた」
「…どうしてですか?」
「親父さんがな…
自殺したんだ」