天使への判決

「私もケンジの事好きだよ
淋しい思いさせてごめんね…」

そう言って、ケンジの額に、自分の額を軽く合わせた。

ケンジの吐息と体温が、少し陽に焼けた肌に伝わってくる。


ケンジは苛立ちを抑えるように、深く呼吸を整えた。



以前も同じような事でケンジが拗ねた事があった。

知り合いの結婚式に出席して、朝まで飲み歩いた時だ。
『多分、今日は帰らないからね』
そう伝えた時は笑顔で私を送り出した。

そして、明け方部屋に帰ってからも普通に笑顔で話をしていたが、手元にふと目をやると、ジッポの蓋に指を掛け、カチャカチャと金属音を鳴らしている。

ケンジは苛立ちを隠せずにいた。


普通の恋人同士であれば、相手を縛り付けるためのわがままを言えるのだろう。

しかし、お互い干渉しないという約束が、喉まで出かかった言葉を飲み込ませ、胸を詰まらせる。



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