天使への判決
専務室に行くと、専務から今日のプレゼンの流れを簡単に聞かされた。
「プレゼンっていうのはショーと一緒だ。演出によって組み上げられた舞台で、観客をいかに魅了するかで結果が決まる。」
ネクタイを勝負柄の赤いチェックに付け替えながら、私の目を見て微笑む。
この日のために、リハーサルを何度となく繰り返してきた。
私達のプレゼンに与えられた時間は一時間。
時間をフルに使い、専務が私を演出するストーリーが出来上がっている。
「今日のプレゼンは間違いなくウチに決まるよ」
「どうしてですか?」
「この前も話しただろ?うちの会社がディレクションしないと、ピュアリスの社長が困るように、筋書きができているんだ。
コンペはうちが勝つようになっているんだよ」
この満ちあふれた自信はどこから来るのだろう…
このご時勢、やはりクライアントもいいものを安く手に入れたいに決まっている。
競合先の博通社はコンペになると破格値をぶつけてくる事で有名だ。
専務がそれに対抗して安い価格設定を投げかけるとは思えない。
何か私たちが知らない得策があるのだろうか…?
「得策なんてないさ」
専務は、心を見透かしたようにそう言ういいながらスーツのジャケットを羽織った。