天使への判決
ピュアリスのプロジェクトに参加する面々が今日のコンペのために集まった。
若手の新鋭デザイナーの入江君が運転するワンボックスカーに乗り込んだのは、高山さんの後釜で広告ディレクションを行った斉藤さん、それからコピーライターの山形さん、コーディネイターの椎名さん。
そして専務。
いずれも各セクションでトップクラスを誇るメンバーだ。
このメンバーで参加するコンペには今まで負けた事がない。
連日の追い込みがピークに達しているのか、心地よく揺れる車内では所々から寝息が聞こえてくる。
コンペの直前で眠っていられるなんて、ある意味感心。
殆ど出番のない私ですら、緊張から胸が高まってそれどころじゃないというのに……
「松山さん」
運転席から入江君の声が聞こえ顔を上げると、ルームミラー越しの彼と目が合った。
「松山さんはコンペに出るのって初めてですよね?」
「うん…まあね…」
入江君は私と同じ歳だが、数年前に専務の引き抜きでこの会社に入ったため後輩にあたる。
その辺の上下関係をよく理解しているのか、いつまでたっても敬語を崩そうとはしない。
「もしかして緊張してます?」
「当たり前じゃん。ピュアリスの社長と会長が参加するんでしょ?
そんなビックネームを前にしてこんな格好で登場するんだよ」
私はワンピースの裾をつまんでヒラヒラと振った。