天使への判決
2.関西弁の男
——週末——
私はソフィアに出勤した。
金曜日ということもあり、店内はスーツ姿のサラリーマンで賑わっている。
しかし、その辺のラウンジとは客の層が違う事は明らかだ。
ここに来る客のほとんどは、サラリーマンといえど上流階級。
会長、社長、専務…
企業のトップクラスが顔を連ね、羽振りの良さを見せつける。
今夜私がついた客も、企業の専務だと名乗っていた。
「下のモンが出来ん奴ばっかでな、苦労しとんねん」
男は黒いスーツを綺麗に着こなし、少しクセのある関西弁でゆっくりと話す。
水割りのグラスに手を伸ばす度に、スーツの袖から純金でダイヤを散りばめたロレックスがチラチラと見えていた。
「愚痴を聞くんは嫌いか?」
「いや、こういう仕事していたらお客さんはいろいろ悩みを話されるんですよ。いろいろ話していただく事で、少しでも心の拠り所になってもらったら嬉しいですよ」
「そやろうな。お姉ちゃんみたいにキレイな女に話を聞いてもらえるんやったら、あることないことベラベラ喋ってしまうやろな」
「う〜ん。私って何でも本気にしてしまうタイプなんで、ないことを話されちゃうと困ってしまいますけどね」
私がとびっきりの笑顔を見せると、関西弁の男は嬉しそうに微笑んだ。