天使への判決
「最近の若いもんは売り上げが悪いくせに、給料だけはしっかり取ろうとしやがんのや。何考えてんだか。しかも都合が悪くなったら逃げ出す始末や」
その後も男は会社の部下の愚痴を吐く。
私は適当に相槌を打ちながら、男の話を黙って聞いていた。
一通り話し終わると、男は自分の耳たぶを触りながら私の事を聞いてきた。
「姉ちゃんはこの店でいつから働いてんのや?」
「う〜ん…。2年くらいかな?
店では結構古い方ですけど、でも週末だけなんです」
「へえ…。なんで週末だけなん?」
「私、そこまでお酒が強い方じゃないの。本当はこの仕事自体、あんまり私に向いていないって思っているから…」
「他に仕事は?」
「昼間働いてますからね。平日は出勤時間が約束できないのも理由のひとつかな…
お客さんはお仕事何をされているんですか?」
男は耳たぶを触りながら少し考えるような表情をした後、
「秘密や」
そう言って優しい目でニコッと笑った。
笑うと目尻にシワが寄る優しい瞳…
私はこの男に不思議な親近感を覚えた。