天使への判決
男は次の日も店にやってきた。
「こんばんは、今日も来てくださったんですね。お仕事帰りですか?」
私が横に座ると、男はおしぼりで顔を拭いて、昨日と同じ優しい笑顔で微笑む。
「ん…まあ…そんなとこや」
昨日、男がキープしたウイスキーをがテーブルに運ばれると、私はグラスに氷とウイスキーを注いだ。
顔を上げると、男と一瞬目が合った。
何歳なんだろう…
私の父がもし生きていたら丁度同じくらいかな…
昨日、私が聞いた質問に男は殆ど応じてくれなかった。
私は男が何の仕事をしているのかも知らなければ、名前も、歳も、知らない。
こんな変わった客は初めてだった。
仕事内容を教えてくれない客はたまにいたが、男は名前さえも教える事を拒んだ。
かといって、怒っている訳でも不機嫌でもない。
私に興味がある事はあからさまだし…
ニコニコして、私の事はいろいろと聞いてくる。