天使への判決
売店にある自動販売機でジュースを購入して、戻ろうとした際、私の目に一人の男の姿が留まった。
多くの老人に紛れて座る、ひと際若い男——。
順番を呼ばれたのか、男はスッと立ち上がって診察室に入って行った。
「あれっ…?」
浅黒い肌。
細身で背の高い容姿。
男は黒いキャップを、目元が隠れるほど深々とかぶっていた。
時折肌寒さを感じる季節であるにも係わらず、短パンにタンクトップといった格好は異様だ。
でも、私が気になったのは別に男の格好ではなく、その容姿にどこかで見覚えがあったから。
「誰だっけ……」
記憶の隅を掘り起こしてみるものの、思い出す事ができない。