天使への判決
「いえ、全然大丈夫ですよ。
それより、高山さんの事でなんかあったんですか?」
専務が高山さんの話を持ちかけたのは、私を誘う口実にすぎないだろう。
「あぁ…その事はなんとかなりそうだ。持ちかけて悪かったな。」
やっぱり、予想してた答え。
「セイレンの販売促進は、高山さんに引き継ぐんですね。」
「そうだな、そうしようと思ってるんだが、親父さんにあんな事があった直後だろ?
仕事に復帰したと言っても、彼女自体まだ情緒不安定みたいなんだ。」
「やっぱり、そうですよね…」
「それに、お前を起用したCMシリーズは、自分でやり遂げたいっていうのもあるんだ。」
専務らしいと思った。
モノ作りにこだわる、根っからの職人気質。
本来、既に決まっている仕事は他の人間に任せて、新しい仕事に就いた方が合理的だ。
元々、高山に任せるつもりなどなかったに違いない。