天使への判決

「いえ、全然大丈夫ですよ。
それより、高山さんの事でなんかあったんですか?」

専務が高山さんの話を持ちかけたのは、私を誘う口実にすぎないだろう。


「あぁ…その事はなんとかなりそうだ。持ちかけて悪かったな。」

やっぱり、予想してた答え。


「セイレンの販売促進は、高山さんに引き継ぐんですね。」

「そうだな、そうしようと思ってるんだが、親父さんにあんな事があった直後だろ?
仕事に復帰したと言っても、彼女自体まだ情緒不安定みたいなんだ。」


「やっぱり、そうですよね…」

「それに、お前を起用したCMシリーズは、自分でやり遂げたいっていうのもあるんだ。」




専務らしいと思った。


モノ作りにこだわる、根っからの職人気質。



本来、既に決まっている仕事は他の人間に任せて、新しい仕事に就いた方が合理的だ。

元々、高山に任せるつもりなどなかったに違いない。



< 264 / 328 >

この作品をシェア

pagetop