天使への判決


「俺がCMに出演した頃だからちょうど4年前だな。
ピュアリスが下請けの工場を吸収して、買い取ったのは…。

吸収合併っていうのは表向きで、その工場は裏側でピュアリスの子会社として運営されていた。

脱税のやり方まではよく分からないが、その裏会社からの過剰請求や、工場を買い取った際の金が、暴力団の資金源になっていたらしい。」


恐らく、専務の言う暴力団というのが中山組の事だろう。


「と、まあこんな経緯だが、安心しろ。
最近の景気悪化で、その裏会社は解散したし、脱税するほどの力はピュアリスに残ってないんだ。」


専務はピュアリスの脱税の事をさらっと言ってのけてしまうと、飲みかけのワインを口にした。


複雑な心境だ。


うちの会社に於いてメインクライアントの景気が悪いのに、「安心しろ。」と言う専務。

安心させたいのなら、事実は言わないで伏せておく方法が正しい選択だろう。

しかも仮に現在脱税していなくとも、脱税していた事実は変えられない。

安心できるとか言う問題ではない。




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