天使への判決
「ねえ、会えなくなっても別にいいの?」
私はケンジの腕に自分の腕を絡ませ、
わざと甘えるように、上目使いで彼の目を見つめた。
「リサはどうしたい?」
ケンジはショートホープを根元まで吸いきると、灰皿にもみ消してベッドから起き上がる。
「さあ…。」
「なんだそれ?」
ケンジはそう言って冷蔵庫に向かった。
そこで会話は終わってしまった。
この会話にこれ以上の発展は無意味だ。
ケンジの意見を聞いても聞かなくても答えは決まっていたから。
私は専務の秘書などという面倒な仕事を断るつもりでいた。
専務の秘書ともなれば、給料も今の倍以上は見込める。
しかも将来性もある。
だが、私は自分自身の未来に対してとか、夢とか希望とか、そんなものにはあまり興味がわかない。
人間には『明日』という最も身近な未来でさえも、わからないのだから。
小さい頃に突然居なくなった父と母。
私はその後、未来に希望を抱く事を捨てていた。
神様というものの存在を定義する人間がいれば、私は言いたい。
そんなモノは存在しないと…