天使への判決
ある日、みかじめの集金に珍しく堅二さんが同行した。
その帰り際、堅二さんは助手席の窓を開けると、
「なあ、ナオキ?
お前は将来の夢とかあるのか?」
そう言って、窓の外の走り去る景色を虚ろに眺めた。
「へ?何ですか、唐突に…」
普段の堅二さんからは決して出て来ないような質問。
俺は驚いてすっとんきょうな声を上げる。
「夢ですか…小さい頃は夢もありましたけどね…」
堅二さんの顔色をチラッと伺いながら質問に答える。
「そうですね、たいした夢は無いですけど、大金を手に入れて海外でも飛びたいな…なんつって。
…リゾート生活って昔から憧れていたんですよね。」
堅二さんはポケットからショートホープを取り出すと口に咥えた。
「俺は以前、レッドスピードと鳴水組から集団で殺されそうになったことがあってな…
それを助けてくれたのがシュウイチさんなんだ。」
えっ?
鳴水組…
レッドスピード…
そうだったんだ…
驚きの言葉を喉の奥に押し込めると、堅二さんの次の言葉を固唾を飲んで待つ。