天使への判決
「松山さん、ちょっといいかしら?」
私の視線に気付いた高山さんが、黒縁のメガネを指先で押し上げると奥から手招きした。
「根暗女がお呼びね。」
私の隣で、パソコンのモニターに顔を隠しながらユウコがニヤニヤと笑う。
なんだろ…
私が製作ルームに小走りで向うと、
「こっちへ…」
高山さんはそう言って、私を隣の商談スペースに入るよう促した。
彼女ほど口数の少ない女性は珍しい。
ましてやディレクターと経理事務なんて、今まで接点らしい接点などなかったので、私は殆ど彼女と会話を交わす事などなかった。
こんなカタチで呼び出しされるなどもってのほかだ。
「専務から何か聞いた?」
彼女から開口一番出たそのストレートな質問に、沖縄ロケでの専務の話が頭を駆け巡る。
「えっと…ピュアリスの事ですか?」
彼女の質問の真意を知るために咄嗟にピュアリスの名前を出した。
自分の事ながら、頭の回転の速さに惚れ惚れするわ…