天使への判決
「うん。笑った顔の方がさらに美人だな…」
俺がリサの大きな瞳に視線を移すと、彼女は目線を反らし、奥のボックス席を凝視した。
さっきまで言い争いをしていたボックス席は空となり、従業員が後片付けをしている。
中山のチンピラはいつの間にか退散したようだ。
「…ありがうございます」
美人と言った事に対してか、口論を修めた事に対してか、どちらとも判らない上の空のような礼を言って、リサは大きなため息をつた。
そして再びフルーツに手を伸ばす。
いかにも、可愛いとかキレイとかいう言葉は聞き慣れて、耳にタコができるといった反応だ。
その商売っ毛のない対応が俺の男心をさらにくすぐる。
「リサは夜の女じゃないだろ?」
「どういう意味ですか?」
「昼間働いてるよな?」
リサが怪訝な顔をする。
「何でわかるんですか?」
「まあ、直感かな?」
リサは、俺の空いたグラスにウイスキーを注ぎ足した。