天使への判決
そして俺は、意識を失った。
そこから先は本当に何も覚えていない。
生死の境をさ迷うとは、おそらくこういう事を言うんだ。
俺は気がつくと、病院のベッドに横たわっていた。
窓から雲ひとつない青空が目に映り、白いブラインドがその青い空と、ボーダーのコントラストを作っている。
コンコン…
ドアをノックする音が聞こえ、四十代くらいと思われる看護婦が入ってきた。
「木山さん、具合はどうですか?」
看護婦はカルテらしきものを手にしたまま、俺の側にやってきて、優しい笑顔をみせた。
「背中はイテェし、最悪…」
俺はぶっきらぼうにそう言って、看護婦から顔を背けた。
身体を反転させるのも苦痛だ。
その時ふと、窓際の棚に活けられた向日葵を見つけた。
誰かが持って来たのか、小さな黄色い向日葵は窓の外を眺めるように、花を咲かせている。