天使への判決


そして俺は、意識を失った。

そこから先は本当に何も覚えていない。

生死の境をさ迷うとは、おそらくこういう事を言うんだ。



俺は気がつくと、病院のベッドに横たわっていた。


窓から雲ひとつない青空が目に映り、白いブラインドがその青い空と、ボーダーのコントラストを作っている。



コンコン…


ドアをノックする音が聞こえ、四十代くらいと思われる看護婦が入ってきた。

「木山さん、具合はどうですか?」


看護婦はカルテらしきものを手にしたまま、俺の側にやってきて、優しい笑顔をみせた。



「背中はイテェし、最悪…」

俺はぶっきらぼうにそう言って、看護婦から顔を背けた。

身体を反転させるのも苦痛だ。


その時ふと、窓際の棚に活けられた向日葵を見つけた。


誰かが持って来たのか、小さな黄色い向日葵は窓の外を眺めるように、花を咲かせている。





< 54 / 328 >

この作品をシェア

pagetop