天使への判決
「ああ、その向日葵ね、リサちゃんが持って来たんですよ」
看護婦は体温計を俺に渡しながら微笑んだ。
「えっ?…リサ…が…?」
明らかに戸惑う俺…
そんな俺に気づいてないのか、看護婦は言葉を続けた。
「リサちゃん、ずっと心配してたんですよ。木山さんが死んだらどうしよう。私のせいだって…」
「リサの…せい…?」
「あの子ね、小さい頃に事故で両親亡くしちゃってね…」
看護婦は何かを懐かしむ様に、指で向日葵を触っている。
「その時も、自分のせいだって泣き叫んでいたわ。」
そこまで話した後、看護婦はハッと我に返ったような顔をして苦笑いをする。
「いけない、いけない。ついつい話しすぎました。今聞いた事はリサちゃんには内緒にしてて下さいね。
でも、意識が戻って良かったわ!」
俺の頭の中で看護婦の言葉がグルグルと回る。
リサが見せた、
天使のような表情とダブりながら…
「あ、私、田子森です」
看護婦が部屋を出る時、思い出したように振り返って言った。
「田子森 美樹っていいます。
ミキ姉ちゃんって呼んでくださいね」
「姉ちゃんって歳かよ!」
俺は思わず笑っていた。
一体、何日ぶりなんだろう…久しぶりに笑った気がした。