天使への判決
この世界では、一度破門にされると門をくぐれる組が無くなる。
更には、前科持ちとなると、この業界はもちろん、社会復帰すら出来ずに路頭に迷う事となる。
破門、出頭、それに加えて詫び料…
俺は破門される事の怖さを良く知っているだけに、中山組と朝戸の誠意を十分に感じる事が出来た。
「朝戸…
頭上げろよ…」
頭を床に擦り着けたまま、微動だにしない朝戸に声をかけた。
「元はというと、お前の舎弟達のケンカを安易に買ったのは俺だ。
これは、ただの内輪ゲンカなんだよ」
俺の声を聞いて、朝戸はゆっくりと顔を上げた。
その目からは涙が溢れ、床の一点を見つめたまま唇を震わせていた。
「…堅二、ありがとな」
何度もそう言う朝戸を、許さないはずはなかった。
俺はそこまで鬼にはなりきれなかったんだ。