天使への判決


「クソッ…ナオキの野郎…」

俺は携帯を閉じるとダッシュボードを足で蹴り上げる。

一体どこで何をしているんだ…


イライラを隠せない俺を、ヨウスケはハンドルを握ったまま時折心配そうに横目で見ていた。

ヨウスケの運転する白のベンツは、渋滞を避けるように路地を抜け、隣町の駅から然程離れていない古びたアパートの前で停まった。

18歳で田舎から出てきたナオキはここで一人暮らしをしている。


「堅二さん、車の中で待ってて下さい。俺一人で見てきますんで…」

ヨウスケはそう言うとエンジンをかけたままの車から降り、軽快にアパートの階段を上がっていった。

オートロックなどのセキュリティー機能が充実した今どきの高級アパートと違い、ナオキの住むアパートは車の中からでも全ての部屋の玄関を見渡す事ができる。


俺は車の中からヨウスケがナオキの部屋のチャイムを鳴らす姿を眺めていた。



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