その男、草食系につき。
事例 2
「百合子先輩、今日は本当にありがとうございました。この後食事でもいかがですか?」
仕事の関係で営業の外回りに付いていった夕方のことだった。
そのあとに続く彼の「おごります」という言葉に一も二もなく飛び付いた私だったけれど、クレープ屋を思わせるパステル調のファンシーなカフェの前に立ったとき、後悔したのは仕方のないことだと思う。
「桜木氏、ここ?」
「はい、実は一度入ってみたかったんです。でも男一人ではちょっと…ガレットがおいしいらしいんですよ。」
こんな店では男一人でなくても十分恥ずかしいだろう。
少なくともビジネススーツを着た2人には似つかわしくない。
それは確かだ。
店に入ると、中は意外にも普通…ということはなく、やはりファンシーだった。
はじめはさすがに肩身を狭そうにさせていた彼だったが、メニューを見ているうちにそんな気鬱は消えさったようだった。
順応が早いのは若者の特権?