その男、草食系につき。
年下、とはいえ自分よりはるかにでかい図体の人間がメニュー片手に真剣に悩む姿はなんだかとても可愛くみえた。
「百合子先輩何にするか決まりました?」
なんとなく眺めていたらふいに問いかけられてほんの少し動揺したのはナイショだ。けして見惚れていたわけじゃない…はず…と思う。
「え、私?決めたよ。これ、チキンとトマトの香草グリル焼き。美味しそうでしょ。」
「あ、そうなんですよ。それがすごくうまそうで、でもこっちのキノコのペペロンチーノとすごく悩んでて…。」
「ああ、じゃあ私の分わけたげるよ。そんなに食べないしね。だからペペロンチーノにしたら?」
「え。まじですか!?」
「いいよ。」
「やたっ。ありがとう百合子先輩。あ、デザートは決まりました?」
「デザートまではさすがに食べられないよ。」
「そうですか?じゃあオーダーしちゃいますね。」
そういった彼に後はまかせて化粧室に行くと言って席を外す。
戻ってから料理がでてくるまでしばしの雑談タイムとなった。
会話しているとわかるのだけれど、彼はその外見に反してやたらと受身だ。
強く主張することはあまりない。
こちらの主張にうまく相づちをうち、たまに言葉をはさむくらい。
なんだかデートみたいだと雰囲気を楽しんでいた。
料理が出てきてからも楽しい会話が続いていた。
だから、デザートがでてきたときに驚いた。