その男、草食系につき。
先に言っておくと、驚いたのは私の分までデザートが用意されていたとかそうゆうことじゃない。
確かに私の前にも置かれたのだけれど、テーブルを間違えたんじゃなかろうかと思った。
疑問を桜木氏にぶつけたところ、笑顔で返された。
「いえ、間違ってませんよ?」
「でも私、デザート頼んでないけど。」
「僕が頼みました。」
「私、お腹いっぱいで食べられないよ?」
「僕が食べます。」
やっぱり彼は笑顔で答えた。
それはもう、アイドル顔負けのキラキラとした笑顔だった。
でも私は言いたかった。
言ってしまいたかった。
ぐっとこらえてみたけれど、テーブルの上には4皿。
ベリーソースがかかったガレット。
レアチーズケーキ。
チョコレートパフェ。
抹茶のワッフル。
……頼みすぎだよ桜木氏。
これを1人で食べる気ですか。
そうですか。
彼の未来の姿が見えた………気がした。
そういえば、オーダー時、私はその場にいなかったんだった。
運ばれたデザートたちが私の前にも並べられたということは、きっとスタッフもまさか彼が1人で食べるつもりなのだとは思わなかったんだろう。
二皿づつと思われたのか。
それとも私の方が多く食べると思われたのか。
どちらにしろ、考えたくない。