その男、草食系につき。
…頼みすぎだって、桜木氏。」
「そうですか?でもこうゆうのって、女性が一緒でないと頼みづらいじゃないですか。食べられときに食べておかないと。」
「私が一緒でもへんだよ。だいたい1人で4皿も食べる人フツーいないから。だから私の前にも置いてあるんだって。」
「そうは言ってもこんな機会中々ないですから。」
「桜木氏ってそんなに甘いものが好きなの?」
「そうですね。いつも我慢ができなくなると妹に付き合ってもらってパフェとか食べてますよ。でも最近は思春期の乙女心とかいって付き合ってくれなくて…。」
どんだけ頻繁に付き合わせていたのかと思った。
「じゃあ彼女とかと一緒に行けばいいじゃない。」
「…今はいないんで。」
「そうなの?もてるのにもったいない。」
彼のような人なら引く手あまたなはずなのに、桜木氏は困ったように笑って言った。
「あまり詰め寄られるとちょっと…。」
ああ、なるほど。
なんとなくわかる。
彼のまわりに集まる女性はギラギラしている。
かなり。
「苦手なんですよね。たまに女の人怖ぇとか思いますし。」
「なに、ストーカーでもされた?」
「さすがにそれは…学生時代に毎日手紙が届くとかはありましたけど。とくに気にしてませんでしたし。」
「いや、気にしようよ。それはじゅうぶんストーカーだって。」
「でも直接的な被害はありませんでしたから。しばらくしたらおさまりましたしね。それよりも、妹が部屋で泣いてるから心配になって理由を聞いたことがあったんですよ。そしたらなんて答えたと思いますか?『うまく泣く練習してただけ』って…あの時はじめて女性の涙には気をつけようって思いましたね。」
「それは……妹さんは桜木氏より随分たくましいね…。」
「この先が心配です。」
「いやいや、そのくらいでないとやってけないよ。」
「…そうなんですか?やっぱ怖ぇ。」
…どうやら彼の不信感を余計に煽ってしまったらしい。
せっかくのイケメンがなんて微妙な顔をしてるんだろう。