その男、草食系につき。
「高倉さんて〜桜木さんとすごぉぉぉくっ!仲が良いですよねぇ〜。まさか付き合ってるなんてことはぁ…。」

「ない!ないですから!!ほら、桜木くんはすごくもてるし、私みたいな何歳も年上なんて興味ないに決まってるじゃない。ね?それに、たまたま同じ学校の先輩後輩だっていうのがわかって、そのせいで気やすく思ってるだけよ。」

あ、焦った…最後まで言わせるわけにはいかないのだ。
こうゆう会話は知らず知らず尾ヒレがついてひとり歩きしてしまうからね。

「まさか」が「らしい」に変わるのはあっというまなのだ。

その前に全力で否定しなくてはいけないよね。

というか、まさかと口にした彼女は冗談めかしていたけれど目が笑っていなかったから。

それからまさかと彼女が口にした瞬間、痛いというか刺し殺されんばかりの鋭い視線を背中と言わず全身で感じたしね。

焦り過ぎてキャラ崩壊してるしね。

落ち着け私。

とりあえず言わせて欲しい。


…おまえら酔っぱらっていたんじゃなかったのか。

「…ですよね〜変なこと聞いちゃってすみません〜。」

「気にしないで?でも言うほど仲良くはないのよ?」
なんとかごまかせたようだ。
『ですよね』の言外にたとえ“あんたみたいなおばさんが”と含まれていようとも…多少腹は立つけど…あらぬ疑いをかけられるよりはるかにましだ。

これでも最低限の平和は守りたいんだ。

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