その男、草食系につき。
宴会のはじめの頃はかわるがわるやってきてはかいがいしく世話をやいていた女性陣も、脈がないとわかると次々と彼から離れて手酌でお酒をあおっていった。
私はというと、それなりに部長にお酒をつぎつつ自分でも呑んでいたけれど、元来アルコールに強い体質。
気づけば素面でいるのは私と、全く呑んでいない桜木くんのみだった。
他は泥酔状態。
すっかり寝てしまっている人も多い。
いつもならここまで荒れることもないのだけれど…と、ちらりと正面の彼をみると、おもいっきり目があってしまった。
「…なんだか皆さんすっかりできあがっちゃいましたね。」
「そうね。いつもはここまでひどくないんだけど…。」
沈黙が気まずかったのか、彼の方から話し掛けてくれた。けれど今まで話したことのない相手を前に、そう簡単に話題が広がるはずもない。
「すみません、今さらなんですがお名前を伺ってなかったですよね。僕は桜木蛍一と言います。」
確かにいまさらだ。
「ええ、知ってるわ。桜木くんは有名人だから。私の名前は高倉百合子です。よろしく。」
「僕、有名なんですか?何かやらかしたかな?」
「違う違う。新入社員にかっこいい子がいるって女の子たちが騒いでるのよ。大丈夫、今のところ悪い噂じゃないから。」
「あはは…そんなおだてられても困りますよ。でも、僕も高倉さんのこと、何度か見かけてますよ。お名前は…すみません、知らなかったですけど。」
「あら、悪目立ちでなければいいんだけど?」
「そんなことは。広報に行く時にたまに見かけてたんです。仕事のできそうな人だなぁって。」
「そ?悪い評価でないならよかった。仕事ができるかはわからないけど。」
そんなところからなんとなく話が弾んで、気が付けばけっこう仲良くなった。
それから社内で会えば軽く挨拶をするようになった。
彼は私を百合子先輩と呼ぶようになり、私は彼を桜木氏と呼ぶようになった。
まあ、出会いとしては悪くない。
ついでに先輩と呼ばれるようになったのは出身の高校が同じという偶然によるものだ。
私はというと、それなりに部長にお酒をつぎつつ自分でも呑んでいたけれど、元来アルコールに強い体質。
気づけば素面でいるのは私と、全く呑んでいない桜木くんのみだった。
他は泥酔状態。
すっかり寝てしまっている人も多い。
いつもならここまで荒れることもないのだけれど…と、ちらりと正面の彼をみると、おもいっきり目があってしまった。
「…なんだか皆さんすっかりできあがっちゃいましたね。」
「そうね。いつもはここまでひどくないんだけど…。」
沈黙が気まずかったのか、彼の方から話し掛けてくれた。けれど今まで話したことのない相手を前に、そう簡単に話題が広がるはずもない。
「すみません、今さらなんですがお名前を伺ってなかったですよね。僕は桜木蛍一と言います。」
確かにいまさらだ。
「ええ、知ってるわ。桜木くんは有名人だから。私の名前は高倉百合子です。よろしく。」
「僕、有名なんですか?何かやらかしたかな?」
「違う違う。新入社員にかっこいい子がいるって女の子たちが騒いでるのよ。大丈夫、今のところ悪い噂じゃないから。」
「あはは…そんなおだてられても困りますよ。でも、僕も高倉さんのこと、何度か見かけてますよ。お名前は…すみません、知らなかったですけど。」
「あら、悪目立ちでなければいいんだけど?」
「そんなことは。広報に行く時にたまに見かけてたんです。仕事のできそうな人だなぁって。」
「そ?悪い評価でないならよかった。仕事ができるかはわからないけど。」
そんなところからなんとなく話が弾んで、気が付けばけっこう仲良くなった。
それから社内で会えば軽く挨拶をするようになった。
彼は私を百合子先輩と呼ぶようになり、私は彼を桜木氏と呼ぶようになった。
まあ、出会いとしては悪くない。
ついでに先輩と呼ばれるようになったのは出身の高校が同じという偶然によるものだ。