この想いを君に…
「慰謝料とか、請求したいのはわかるけど…
あんな奴から金をもらわなくてもいい」

「祥ちゃん…?」

梓ちゃんは困惑した様子で祥太郎を見上げていた。

「子供の親権だけはお前が取れ。
後は放棄しろ」

祥太郎の目は…

レースの時以上に真剣だった。

花火の音や実況の声。

ピットやパドックや下の通路は騒がしいのにこの空間だけは静まり返っていて、みんなが祥太郎と梓ちゃんに注目していた。

「翔とお腹にいる子供、そしてお前を俺は引き取るよ。
今、お前が抱えているゴタゴタがなくなったら…」

祥太郎は自分を落ち着かせるように大きく息を吐いて

「俺と一緒になってくれない?」

飛び切り大きい花火の音がその最後の言葉を消しかけたけど。

その音に負けないくらい、今、このフロアーは。

祝福の声と大きな拍手で溢れ返っていた。
< 286 / 503 >

この作品をシェア

pagetop