この想いを君に…
「仕方ないなあ…」

祥太郎はあたしの手を繋いだ。

あたしは満足そうに笑う。

「そうそう!」

聞きたかった事を思い出した。

「祥太郎、なんで野獣って呼ばれてるの?」

あたしは笑って聞くけど、祥太郎はバツの悪い顔をした。

「…そんな事を知りたいの?」

言いたくなさ気な表情。

「うん、光さんも教えてくれなかった」

「…教えないよ、普通は」

祥太郎もそれ以上は話する気はないみたいで。

黙ってあたしの手を引っ張ってさっさと歩いている。

「手当たり次第…?」

ふと、頭を過ぎった言葉を言うと祥太郎は焦って

「…お前、もうそれ以上、言うな。
そういうのは、もう卒業したんだ」

「そうなんだ〜!」

やっぱりあんまり、あたしにはわからない世界だけど。

祥太郎はもう野獣でなくなったという事がハッキリして、ホッとした。



だって。

サーキットで。

あまり面識のないライダーが通りすがりに祥太郎の事をそんな風に鼻で笑うのを見ると…

いい気はしなかった。

バカにしてるのがわかってた。



でも、あたしから見たら。

祥太郎はいい奴。

昨日で更に実感。

きっと、そう呼ばれるのは。

何かが祥太郎の中で狂っていたと思うから。
< 304 / 503 >

この作品をシェア

pagetop