この想いを君に…
「お兄ちゃんとむっちゃんは一緒に座り」

観覧車に乗ると、奏さんはそう指示して自分は一人、ニヤニヤ笑いながら座っていた。

「…お前もオカンの回し者か?」

光さんがため息まじりに言うと

「私はお母さんの回し者じゃないで。
お兄ちゃんが女の子を家に連れてくるなんか考えられへんから。
お兄ちゃんが連れてくるなら特別な存在なんかなって思っただけ」

そう言って奏さんは真っすぐあたしを見つめた。

「むっちゃんはお兄ちゃんの事、どう思う?」

「えっ…?」

急な質問に慌てた。

「どう…って言われても。
パパのお店で働く従業員で同じチームの先輩ライダーで…」

特別に思った事はない。

「むっちゃん、そんなん真剣に答えんでもええから」

光さんはあたしを見て苦笑いをした。

「第一、俺はむっちゃんのお母さんよりも年上やねんで。
どう考えても有り得へんやろ?」

光さんは奏さんを諭すように言った。

そう、光さんはママよりも1歳年上。

だけど。

不思議とあたしは光さんとそんなに歳の差を感じない。

チーム内にはあまり年功序列、というのがないからかもしれないけど。

周りも祥太郎とか、年上が多いせいもあると思う。
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