この想いを君に…
しばらく無言ののち。

「私は駅で一緒に歩いてくるのを見た時、心の中で喜んでた」

観覧車から見える遠くの景色を眺めている奏さんがポツリポツリと話始める。

「お兄ちゃんにもようやくそういう人が出来たんかなあって思ったけど、後からお母さんに聞いたら違うって」

残念そうな表情を浮かべて

「だって、お兄ちゃんとは歳が離れているし、もし結婚する人が現れてもお兄ちゃんと歳が近かったらさ…。
私、ますます話出来へんやん」



…ずっと。

生まれた時からずっと。

奏さんは孤独だったのかもしれない。

光さんと15歳離れているという事は両親も余程早い時に光さんを産んでない限り、歳を取ってからの子供だって事だし。



「…ごめん」

光さんが無言という雰囲気に堪えられないように、奏さんに謝った。

「俺が、こっちに帰れる時でも帰ってこやんかったのが悪かってん。
ホンマにごめんやで」

その言葉に奏さんは笑って頷いた。

そして。

「むっちゃん、お願いがあるねん」

奏さんは手を合わせて

「もし、お兄ちゃんがこっちへ帰って来れるのに帰らん時とかは連れて来て。
もちろん、むっちゃんの交通費とか遊ぶお金は私が出すから」

「あのなあ、ちゃんと帰ってくるから、むっちゃんに変なお願い、せんといて」

光さんは憮然としていた。
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