この想いを君に…

other side

「ガラス、割ったみたい…」

桜はリビングに戻って来るなり、そんな事を言うので知樹と泰樹は同時にため息をついた。

知樹が立ち上がると

「行かなくていいから」

総一はそう言ってため息をついた。

真由は総一の隣でずっと泣いている。



「…むっちゃんのパパはパパじゃないって本当なの?」

泰樹が堪らなくなって聞くと真由が頷いた。

桜も知樹も口を少し開いたまま、何も言えない。

「…死んじゃったから、その人は」

真由の口からようやく出た言葉がそれだった。

「死んだ?」

知樹は総一の顔を見る。



総一はしばらく俯いていたけれど、やがて顔を上げて3人の子供の顔をしっかり見つめた。

「一生、子供には話さないと決めていたけど」

3人の子供達はじっと総一の顔を見つめた。

「もう、言わない訳にはいかないね」
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