この想いを君に…
「電話、してみたら?」

携帯の画面を見てため息をつく総一に光はそう言った。

「…かけても、きっと出ないから。
きっと、余計に腹を立てるよ。
…処分も、今はまだ迷っている」

苦笑いをする総一を見て、祥太郎が言う。

「もし、俺の父ちゃんなら、家、追い出されるし、レースなんてとんでもない!
1年は出してもらえないね」

そう言って身震いする。

「兄ちゃんが喧嘩して停学になった時も父ちゃんはおもいっきり兄ちゃんを殴ってたしね。
『お前に殴られた子はもっと痛い思いをしてる!』って言って」

「懐かしいな」

今は亡き、二人を思い浮かべる。

優しいけれど、厳しかった祥太郎の育ての父、賢司。

総一もまた、小学生の時にその賢司に引き取られて高校卒業まで一緒に過ごしたから。

父親みたいな存在だった。
拓海や祥太郎は、弟みたいな存在だった。

「あの停学が、ウチのチーム初の出走停止処分だったんだな」

あの時の、拓海の表情は一生忘れられない。

レースを辞退する羽目になって、ようやく自分のやってしまった事を後悔していた。

総一はその時の拓海と、朝になって帰ってくるであろう睦海を重ね合わせた。

処分、するべきか…
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